医療情報

令和4年3月30日
【かかりやすい病気・怪我】
 原因やリスク,症状を正しく理解することが,予防や早期の診断・治療につながります。
 
(1)マラリア
 タンザニアは世界で最もマラリア感染者数が多い国の1つで,年間を通じて,ダルエスサラームやザンジバルを含めた全土でマラリアの感染リスクがあります。ほとんどが「熱帯熱マラリア」で,早期に診断を受け適切な治療が行われなければ,貧血、腎不全、肝不全、脳障害によって死亡することもあり,「悪性マラリア」とも呼ばれます。突然の悪寒,発熱,頭痛,下痢などの症状が見られた場合は,すぐに病院を受診してください。一時的に症状が良くなったように感じられることがありますが,様子を見ることなくマラリアの検査を受けてください。
 マラリア対策として、マラリアを媒介するハマダラ蚊に刺されないように工夫することが一番です。ハマダラ蚊は日没から日の出まで活発に活動するため、夜間は特に注意が必要です。長袖シャツ、長ズボンを着用し、蚊帳,虫除け剤、蚊取り線香、電子蚊取り機器などを使用することをお勧めします。
 信頼できる医療機関のない地方に長期滞在する場合には、医師に相談の上、マラリア治療薬を持参し、初期の自己管理を行いながら,速やかに都市部の病院を受診するという方法もあります。
 マラリア予防薬を服用するかどうかは,行き先や滞在期間,使用する薬の服用方法や副作用などについて,渡航前に医師と相談して十分な説明を受けて判断してください。また,日本に帰国後も数週間は内服を継続する必要があることを忘れないようご注意ください。
 帰国後1か月(マラリア流行地を離れて1か月)の間に発熱等の症状があった場合には、必ず医療機関を受診し,医師にマラリア汚染地域に滞在していた旨を伝えてください。国内での治療機関については、最寄りの検疫所に問い合わせて感染症科のある病院をご利用ください。
 
(2)下痢性疾患
 タンザニアを旅行中に下痢を経験することは稀ではなく、原因や程度はさまざまです。 軽度であれば水分補給や市販薬の服用で対応できることも多いですが、水のような下痢が頻繁(1日10回程度)にある、血液混じりの便が続く、高熱を伴う、強い腹痛や嘔吐を伴い水分の摂取が困難,などの場合には,病院を受診し治療を受けることをお勧めします。一般的なノロウイルス,大腸菌などのほか,コレラや赤痢、腸チフスの発生も報告されています。下痢や嘔吐がマラリアの症状であることもあります。
 
(3)HIV(エイズ・ウィルス)感染
 タンザニア国民のHIV成人罹患率は4.7%と高率です。症状のないウイルスキャリアも含めた感染者の血液や体液との接触により感染します。交通事故や手術などでの輸血や,婦人科診察や内視鏡検査,歯科治療などの医療行為を受ける際には,医療機関の感染対策が十分であるか注意し、危険な性交渉は避けてください。
 
(4)その他の風土病等
(イ)昆虫による感染症: デング熱、トリパノソーマ症(アフリカ睡眠病)、フィラリア症、リーシュマニア症、リフトバレー熱、チクングニア熱、回帰熱、発疹チフス等
(ロ)経口摂取(食品,水等)による感染症: 腸チフス・パラチフス、アメーバ赤痢、ウイルス性肝炎(A,E 型)、ブルセラ症、腸管内寄生虫症等
(ハ)血液・体液や性交渉による感染症: ウイルス性肝炎(B,C型)
(二)皮膚からの感染症: 住血吸虫症
(ホ)その他:結核、破傷風、狂犬病、髄膜炎菌性髄膜炎(2002年に流行)
 
(5)有害昆虫、毒ヘビ
 タンザニアの動物の中には、毒性を持つため注意が必要な動物も見られます。アオバアリガタハネカクシ(ナイロビ・フライ)は、日本でも見られますが、「フライ (蝿)」というよりは、羽の小さなハチか大きなアリのように見えます。体長1センチほどで、頭と体が赤と黒のしま模様になっており、とても目立ちます。この虫の体液にはペデリンという毒があるため、不用意につぶすと毒の付着した部位がひどい皮膚炎になります。虫の体液が着いた手で目をこすると、激しい目の炎症を起こし(ナイロビ・ アイ)、失明することさえあるといいます。つぶさずにそっと払いのけるようにしてください。
 また、当地で見られるヘビ類がすべて有毒という訳ではありませんが、大都市でも比較的目にすることの多いグリーンスネーク(グリーン・マンバ)は、神経毒を持っており注意が必要です。体長1メートル弱で、木の上から落ちてくることもあるので、見かけたら捕まえようなどとせず、接触を避けてください。
 
(6)交通事故
 十分整備されていない車が走り回り、交通規則が守られず,道路が整備されていないなどの理由によって、交通事故が多発しています。市内の乗り合いバスは定員以上に人が乗り込み、整備不良によりブレーキがきかない等により,多くの事故を起こしています。バジャジと呼ばれる小型3輪タクシーや,信号に従わず歩道も走行するバイクなどにも注意が必要です。
 
(7)高山病
 キリマンジャロ山では,高山病や登山による持病の悪化で死亡するケースが毎年発生しています。登山道の傾斜が緩いため特別な登山技術や装備を必要としませんが、5800メートルもの高度に順応できないため体調を崩し、高山病になる可能性があります。肺や心臓の持病が高度によって急激に悪化することもあります。症状が見られたら直ちに標高の低い場所に移動する必要がありますが,救助体制の問題で下山するのに1日近くかかり、その間に死亡するケースがほとんどです。高山病の初期症状である頭痛・吐き気等が見られたら、「せっかく来たんだから」と無理をすることなく、すぐに下山(ゲートまで)してください。また、緊急単独下山に備え、ガイドやポーターの人数にも余裕を持たせてください。なお,山頂近くではマイナス10度まで気温が下がることもありますので、防寒装備は必須です。
 
【健康上心がけること】
(1) コップに注いで出された水や氷入りの飲み物は避け、ボトル入りのミネラルウォーターの利用をお勧めします。レストランで注文する時には、目の前で開栓するのを確認してください。現地食のレストランでは生野菜や皮のないフルーツは避け,十分に加熱調理されたものだけを選ぶよう心がけてください。
 
(2) 蚊に刺されないように注意して下さい。(虫除けスプレー、殺虫剤、蚊取り器,蚊帳の使用、長袖長ズボンの着用など。)
 
(3) 素足での歩行は,土壌からの破傷風菌や寄生虫の感染の危険があります。また、河川や湖沼の淡水には住血吸虫などの微生物が存在するため、近づかないことをお勧めします。
 
(4) 節度ある行動をとり、事故や犯罪に遭わないよう十分注意してください。夜間ダルエスサラーム市内を歩行中の在留邦人が刃物で斬りつけられ、重傷を負ったケースが報告されています。長距離バスや列車内で、薬物強盗による日本人旅行者の被害が発生しています。見知らぬ人からの飲食物を口にすることは避けるようにして下さい。
 
(5) 日中は日差しが強いため、熱中症・脱水症、皮膚や目に対する紫外線傷害等が生 じる危険があります。長時間屋外で活動をする場合は、帽子やサングラスを着用し、皮膚の露出の少ない服装を心掛けて下さい。
 
【予防接種】

(1)赴任者に必要な予防接種

成人:必要性が高いもの
 (a) A型肝炎ワクチン、破傷風トキソイド、腸チフスワクチン
 (b) B型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチン (滞在期間や形態による)
 (c) 髄膜炎菌ワクチン
   ※季節性インフルエンザ、新型コロナウイルスワクチン接種も検討してください

小児:日本で受ける小児の定期予防接種に加えて
 (a)A型肝炎ワクチン,腸チフスワクチン
 (b)髄膜炎菌ワクチン,狂犬病ワクチン (滞在期間,形態による)
   ※季節性インフルエンザワクチン接種も検討してください。
 
(2) 黄熱予防接種
 黄熱リスクの無い国(日本など)から直接入国される場合には、イエローカード(黄熱ワクチン接種証明書)は必要ありません。
 ただし、旅行や仕事などで黄熱病の常在するアフリカ諸国間を移動する場合は、再入国時に無用のトラブルをさけるためにもできるだけイエローカード(黄熱病予防接種済みの証明書)の携行をお勧めします。
(タンザニアは黄熱リスクの無い国とされていますが、タンザニアからの入国に、イエローカードの提出を求める国があります。)
 
(3) タンザニアにおける小児定期予防接種
 
ワクチン 出生時 生後6週 生後10週 生後14週 9か月 18か月
結核BCG 1回目          
ポリオ生 1回目 2回目 3回目 4回目    
ポリオ不活化       1回目    
5種混合 *   1回目 2回目 3回目    
肺炎球菌PCV   1回目 2回目 3回目    
ロタウイルス   1回目 2回目      
MR麻疹,風疹         1回目 2回目
           *  百日咳,ジフテリア,破傷風,B型肝炎,インフルエンザ菌(Hib)
          このほか,HPV ワクチン:14歳 (6か月後に2回目)
 
 
【現地医療機関】
(ダルエスサラーム)
1.アガ・カーン病院(Aga Khan Hospital)
所在地:Ocean Road, Dar es Salaam
電話:(022)-2115151(代表)、(022)-2124111(救急)
概要:市街地に位置する24時間対応の総合病院です。CT スキャン・MRI があり、専門医の診察は曜日の指定があります。比較的入院設備が整っていますので、邦人が外来・入院時に利用しています。
 
2.IST クリニック(IST Medical Scheme Clinic)
所在地:Ruvu Street, Msasani, Dar es Salaam
電話:0718-783393, 0784-783393(代表)、0754-783393, 0782-783393(救急)
概要:ムササニ半島に位置し、在留外国人がよく利用しているオランダ人医師経営のクリニックです。診察時間は平日が8:00~18:00、土曜日は9:00~12:00(要予約)ですが、時間外は緊急電話で対応してくれます。黄熱を含む各種予防接種を受けることも可能です(要在庫問い合わせ)。
 
3.サリ病院(Sali International Hospital)
所在地:589 Yacht Club Rd, Msasani Peninsular Dar es Salaam
電話:(022)-2601296(代表)、(022)-2601265(救急)
概要:ムササニ半島に位置する24時間対応の総合病院です。内科、外科及び産婦人科は毎日診察を行っていますが、その他の専門医を希望する場合は曜日の確認が必要です。救急車あり。
 
4.リージェンシー病院(Regency Medical Centre)
所在地:Alykhan Road, Upanga, Dar es Salaam
電話:(022)-2150500(代表)、0787-228801(救急)
概要:市街地に位置する24 時間対応の総合病院です。専門医の診察は曜日の指定があります。院内に検査専門機関Lancet Laboratoryがあり、医師の診察を受けることなく、検査(血液、尿、便など)だけを受けることも可能です。
 
5.デンタル・スタジオ(Dental Studio)
所在地:1st floor Sea Cliff Village, Dar es Salaam
電話:(022)-222-601155、0753-601155
歯科医:Dr. Abbas Haji (Dentist BDS London)
概要:ムササニ半島の岬近くに位置し、英国の資格を有する医師が診療を行っています。診療時間は9:00~17:00(日曜日を除く)です。
 
(キリマンジャロ・モシ)
1.キリマンジェロ・クリスチャン病院(Kilimanjaro Christian Medical Center:KCMC)
所在地:Sokoine Road, Moshi
電話:(027)-2754377/78/79/80(代表)
概要:北部地域で最大規模を誇る24時間対応の総合病院です。救急車あり。
 
2.聖エルモ・クリニック(Saint Elmo Clinic)
所在地:KILIMANI PLAZA, Selous St., opp. Mawezi Hospital, Moshi
電話:0766-985210、0719-833497(代表)
概要:2014年開業のクリニックです。診察時間は平日8:00~20:00、土曜日10:00~16:00、日曜日10:00~14:00です。医師2人が常勤していますが、レントゲン装置はありません。
 
(アルーシャ)
1.アルーシャ・ルテラン病院(Arusha Lutheran Medical Centre)   
所在地:Wachaga Street (Makao Manya Road とWachaga Street の角)
電話:0736-502376(代表)
概要:ルーテル教会が運営する24時間対応の総合病院です。米国人の医師や看護師が診療を支援しています。救急車あり。
 
2.NSK病院(NSK Hospital)
所在地:27 Unga Limited Area, Arusha
電話:0626-221331(代表)
概要:2016年開業の病院です。現在、常勤医は1人で、診察時間は平日8:30~17:30、土曜日8:30~14:00です。各種検査および診断に力を入れており、透析治療を受けることも可能です。救急車あり。

3.アガカーン・メディカルセンター(Aga Khan University Hospital Arusha Medical Centre)   
所在地:Block H, Area F, Plot 506, Seth Benjamin St. , Arusha
電話:0655-231233(代表)
概要:ダルエスサラームにあるAga Khan Hospitalと同系列のクリニックです。診察時間は平日及び土曜日が8:30~18:30、日曜日が10:00~14:00で、医師3人が常勤しています。清潔で、検査機器も充実しています。
 
(ザンジバル)
1.タサカー病院(Tasakhtaa Global Hospital)
所在地:Vuga St., Zanzibar
電話:(024)-2232341(代表)、(024)-2232222、0779-770577(救急)
概要:2015年に開業した24時間対応の総合病院です。検査機器等医療設備は島内一です。救急車あり。
 
2.ザンジバル潜水病治療施設(Zanzibar Hyperbaric Chamber)
所在地:Matemwe, Zanzibar (Fairmont Resort敷地内)
電話:0777-788500(Dr. Henrik携帯)
概要:東アフリカで唯一潜水病治療が可能な施設です。Dr. Henrikが個人で運営をしており、電話による事前予約が必須です。24時間対応です。