経済状況
2.貿易
(1) 輸出
(a) 主要産品
かつてのタンザニアの輸出は,同国の伝統的輸出品目である農産品(綿花,タバコ,コーヒー等)が大半を占めていたが,
2000年以降金を中心とした鉱物産品の輸出が急増し,2017年には全体の約4割を占めるに至っている。
ただし,金に関して見れば,金の価格の高騰から輸出額に大きな変化は出ていないが,輸出量は減少傾向にある
(2015年に347,908kgあった金の輸出量は,2016年には81,563kgまで減少)。
近年のタンザニアでは,天然資源の不正な流出を防ごうとする傾向が強まっており,2017年3月には,アフリカ最大級の金産出量を誇るアカシア鉱山会社(Acacia Mining plc)に対して,採掘量や納税に関する多額の過少申告があったとして,出荷や輸出の差し止めを行う事態となり,これは,タンザニアの採掘権に関する施策の転換点となった。翌年(2018年)には新たな規制(Mining Local Content Regulations)が設けられており,この規制は,操業におけるタンザニア企業の関与を義務づけ,過去に結ばれた政府と採掘企業との契約内容を一方的に改訂する権限を議会に与えるなど,海外投資家に対して厳しい内容となっている。
品目別輸出額(百万米ドル)
出典:United Nation Commodity Trade Statistics Databaseより作成
品目 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 |
貴石,貴金属等 | 1,621.08 | 1,361.29 | 1,459.89 | 1,716.53 | 1,627.26 |
食用果実等 | 193.78 | 399.53 | 279.31 | 359.16 | 554.78 |
タバコ等 | 129.08 | 322.94 | 293.55 | 370.32 | 216.98 |
コーヒー,茶,香辛料等 | 261.00 | 213.48 | 228.98 | 208.97 | 204.53 |
魚,甲殻類等 | 129.14 | 188.40 | 236.65 | 141.94 | 183.62 |
食用野菜,根,塊茎 | 105.05 | 249.77 | 398.57 | 186.90 | 171.27 |
採油用種および果実 | 167.59 | 360.45 | 166.25 | 165.87 | 89.44 |
鉱石,スラグ等 | 400.14 | 713.72 | 471.29 | 323.43 | 62.73 |
綿,綿織物 | 115.98 | 65.28 | 43.24 | 63.86 | 53.74 |
鉱物性燃料,石油等 | 100.09 | 95.74 | 128.55 | 42.23 | 47.45 |
肥料 | 29.20 | 11.33 | 12.17 | 34.34 | 29.95 |
その他 | 1,160.41 | 1,722.72 | 2,135.80 | 1,128.38 | 936.34 |
合計 | 4,412.55 | 5,704.65 | 5,854.23 | 4,741.92 | 4,178.11 |
(b) 主要輸出先
2017年のタンザニアの主要輸出先上位3カ国はインド,南アフリカ,ベトナムであった。近年ベトナムへの輸出が大きく伸びている。2015年まで好調に伸びていたケニアへの輸出は,最近の両国間の貿易摩擦を巡る緊張の高まりによって減少したものと考えられる。
対中国輸出は,2014年をピークに減少しているが,対中貿易における減速は他のアフリカ諸国においても見られるものである。この背景には,中国の開発発展の主軸のアフリカから中央アジアへシフトが影響していると推察される。
(2) 輸入
(a) 主要輸入品
タンザニアの貿易収支は恒常的に赤字となっており,2015年にはおよそ88億5174万ドルまで赤字が拡大していた。
しかし,2015年後半以降原油価格の下落により輸入額が減少。
また,中古車(「鉄道用等以外の車両等」に含まれる),機械類,鉄鋼および銅製品の輸入の減少によって,2016年以降の貿易赤字は大幅に改善した。
タンザニアの主要輸入品目は石油などの鉱物性燃料であり続けているが,近年新たなガス田や炭鉱が見つかっており,
それらの開発が進むことで状況が変化していくことも予想される。
主要品目輸入額の推移(百万米ドル)
出典:United Nation Commodity Trade Statistics Databaseより作成
品目 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 |
鉱物性燃料 | 4,858.91 | 3,563.53 | 7,451.16 | 1,434.04 | 1,529.30 |
ボイラー,機械等 | 852.21 | 1,308.40 | 948.85 | 935.53 | 958.00 |
鉄道用等以外の車両等 | 1,128.79 | 1,169.28 | 828.29 | 757.14 | 598.50 |
電気機械等 | 622.59 | 745.57 | 961.26 | 616.51 | 564.05 |
化学薬品 | 310.35 | 481.15 | 402.87 | 326.53 | 425.07 |
プラスチック・同製品 | 480.85 | 598.04 | 443.07 | 406.22 | 399.30 |
動物性・植物性油脂等 | 245.25 | 445.94 | 275.27 | 307.99 | 290.32 |
鉄鋼 | 499.91 | 384.47 | 297.88 | 265.37 | 271.49 |
穀物 | 395.51 | 346.73 | 261.10 | 202.25 | 204.27 |
鉄鋼製品 | 487.67 | 439.08 | 280.69 | 212.89 | 185.06 |
ゴム・同製品 | 222.51 | 204.40 | 155.13 | 155.54 | 151.12 |
綿・綿織物 | 16.41 | 9.00 | 14.14 | 43.31 | 37.67 |
採油用種および果実 | 7.42 | 31.45 | 17.48 | 20.67 | 17.81 |
その他 | 2,397.04 | 2,964.09 | 2,368.78 | 2,192.11 | 2,133.45 |
合計 | 12,525.41 | 12,691.11 | 14,705.97 | 7,876.09 | 7.765.41 |
(b) 主要輸入先
2010年以降,中国とインドからの輸入が多い構造が変わらず維持されているまた,2015年のサウジアラビアからの輸入額が高いが,その97%は鉱物性燃料で占められていた。
(3) EAC諸国との貿易
東アフリカ共同体(East African Community; EAC)は, 2005年の関税同盟発足に続き,2010年には人,モノ,労働,サービス,資本の自由な移動や,事業設立および住居の権利を保障することを通じた域内統合の発展を目指す域内共通市場化への移行を開始した。しかし,域内の非関税障壁(NTB)撤廃については,EAC加盟諸国(タンザニア,ケニア,ウガンダ,ルワンダ,ブルンディ,南スーダン)の国内の規制や現地調達率など,未だ多くの課題が残っている。現在各国は,共通市場議定書と各国国内法の調和を図るべく,関連国内法の再整備を進めている。
タンザニアの対EAC加盟国貿易は,ほとんどが黒字を維持している。対ケニア貿易では,かつては貿易赤字になることが多かったが,2015年のタンザニアの大幅の黒字以来度々貿易摩擦が生じている。域内全体に対しては,タンザニアは鉄鋼・スチール,鉱物性燃料等,ガラス・同製品,肥料,クラフト紙,プラスチック製品,発電機などの品目で輸出を伸ばしている。