日本のタンザニア援助
日本とタンザニアは,同国が1961 年に独立して以来,国際場裡および二国間関係において良好な協力関係を維持してきた。現在タンザニアは中所得国化を目指す国家戦略をとっており,日本はタンザニアの同方針に沿いつつ,包括的で持続可能かつ安定的な経済成長と貧困削減の好循環の形成・促進を目指して支援している。特に,「第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)」で示された重点分野をふまえ,タンザニアにおいて質の高いインフラを活用した基盤インフラ整備,ビジネス環境改善,経済成長を牽引するセクターとしての農業への支援などを推進していく。
日本がタンザニア支援における重点分野として現在掲げているのは,(1)経済成長のけん引セクターの育成,(2)経済・社会開発を支えるインフラ開発,(3)ガバナンス・行政サービスの向上の三店である。
(1)では,タンザニア政府が推進する「農業セクター開発プログラムⅡ(ASDPⅡ)」の枠組に沿って人口の7 割以上が従事する農業セクターを支え,コメ生産支援,灌漑農業, フードバリューチェーンの構築等に支援を展開することを目指している。また工業化を最優先課題とするFYDPⅡの下,ビジネス環境改善,カイゼン等を通じた活力ある企業部門の育成などにも取り組んでいる。(2)では, TICAD VIにおいても強調された我が国の「質の高いインフラ」により,運輸・交通,電力・エネルギー等の基盤インフラ整備を支援することを目指している。(3)では,昨今の経済成長に伴い進む地域格差,所得格差の拡大が社会問題になりつつあるタンザニアにおいて,公平性の観点から,地方行政,水,保健医療サービスなど基礎的な行政サービスの改善に取り組んでいる。鉱業,製造業,通信・観光・金融などサービス分野の成長が顕著なことに加え,近年探査が進む天然ガスを始めとする豊富な資源を抱えるタンザニアであるが,高い潜在性の一方で,貧困率は28.2%と依然高い水準にとどまり,人口密度の低い広い国土,膨大な基礎的社会インフラへのニーズ,脆弱な行政機構,都市部と農村部の格差等に加え,若年層の雇用やビジネス環境改善等の課題が引き続き存在する。政府は2016 年に「第二次国家開発5 か年計画(FYDPⅡ)」を策定し,更なる経済成長と貧困削減の促進に取り組んでおり,日本としてタンザニアの国家戦略に沿いつつ,安定的な経済・社会開発を引き続き支援していく必要性は高い。