新年の御挨拶
令和4年1月4日
在タンザニア日本国大使館
特命全権大使 後藤真一
特命全権大使 後藤真一
皆さん、新年明けましておめでとうございます。新たな年を迎え、日頃の大使館の活動へのご協力とご理解に対し、改めて御礼申し上げます。タンザニアにおいても昨年末から新型コロナのオミクロン株とみられる感染拡大が進行し、相変わらず感染予防に十分心がけるべき状況が継続していますが、大使館として常に把握した最新情報を提供するなどして皆さまのタンザニアでの生活や日本などへの渡航に関する対応においてお役に立つよう努めて参りますので、宜しくお願い致します。
さて、昨年はタンザニアにとっても、日本にとっても時代を画する年でした。言うまでもなくタンザニアは、1961年12月9日の英国信託統治領からのタンガニーカ独立から60周年を迎え、3月に発足した初の女性大統領サミア・ハッサン政権の下で、昨年同日ケニア等近隣各国から元首を招いて盛大な独立記念式典が催されました。既に当館HP上でご案内した通り、日本はいち早くタンガニーカを国家承認しましたので、日本とタンザニアの外交関係についても60周年となりました。また、新型コロナ対応に多くの関係者がご尽力頂き、夏には一年遅れで2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、いずれにもタンザニアから選手が派遣されました。特にオリンピックのマラソンには男女3選手が参加して、困難なトレーニング環境にありながら札幌でのレースで大いに健闘しました。
大使館の外交活動も新型コロナに大いに影響される中で、日本としての人道的な国際貢献の一環として、新型コロナ支援にも積極的に取り組んできております。タンザニアに対しても一昨年4月には世界的な感染拡大の初期段階でマスクや医療用手袋などの供与、LIXIL社の簡易トイレの提供などを補正予算で迅速に決定し、国連機関のUNICEFを通じて実施したのを皮切りに各種支援を進めております。昨年6月に菅前総理がCOVAXワクチン・サミットにおいて表明した途上国へのワクチン提供のための総額80億ドルの資金提供は、それまでに既に拠出していた20億ドルと相俟って、国際社会から歓迎されました。昨年夏以降、タンザニアへも各種ワクチンが到着していますが、人口に対する接種率は依然として3%程度に留まっています。このため、それらワクチンの使用期限内での適切な接種の実現に向けて、その管理や輸送面での支援が課題となっており、日本としてもいわゆる「コールドチェーン」の確立に向けて支援を進めていきたいと思います。
今年は、1993年に日本が冷戦後の世界におけるアフリカ開発支援を目指して開始したTICAD(アフリカ開発支援のための東京国際会議)の第8回会合が、チュニジアで開催されます。2016年にケニアのナイロビで開催された会合に続き、2回目のアフリカ大陸での会合となりますが、主要テーマのひとつとしては、やはり現下の状況においてアフリカ諸国からのニーズが大きい新型コロナ対策支援が取り上げられる見通しです。他方、世界で進展するデジタル・トランスフォーメーション(DX)や先の英国でのCOP26で議論された気候変動対策などの地球環境問題も、アフリカ諸国の発展との関係においても看過できない重要性を帯びてきています。DXはモバイルマネーの普及にみられる通り、十分なインフラやサービス提供体制が整わない途上国に重要なソリューションをもたらす半面、経済安全保障の動向とも連動して支援する側の陣営相互が基盤的なネットワークの囲い込みの様相を呈することも懸念されます。また二酸化炭素などの温室効果ガスの排出抑制に取り組みつつ、野生動植物の宝庫とも言える東アフリカにおいて、成長著しいタンザニアを含めた国々の開発と生態系の共存・調和を中長期的な観点からいかに図っていくかについて、最新技術の応用とともに世界中の叡智を結集すべき時期を迎えています。日本がイニシアティブをとるTICAD8において、アフリカ諸国との共通の視点に立って、望ましい将来に向けての道筋に何らかの示唆が打ち出せるかに注目が集まることでしょう。
冒頭申し上げた通り、本年も新型コロナ禍にあって油断できない状況が継続し、皆さんのご事業や生活に大きな制約がかかることと思われますが、大使館として少しでもお役に立てるよう努めて参りたいと思います。最後に皆さんのご事業のご発展とご健勝を心からお祈りして、新年の御挨拶とさせて頂きます。
以上