後藤大使のタンザニア・スポーツ界探訪シリーズ(7) 大会結果のご報告

令和3年9月13日
 57年振りの東京での開催として数々の感動を与えてくれた東京2020オリンピック・パラリンピックも、9月5日のパラリンピック閉会式をもって幕を閉じました。本来の「平和の祭典」としての使命に加えて、東日本大震災からの復興、さらに新型コロナ禍で世界が苦しむ中でこれに人類が力を合わせて打ち勝つ意味をも託された大会となりました。前例のない困難を乗り越えて全ての日程が無事終了を迎えたことに関し、準備・運営に携われたすべての方々に心からの敬意をもって感謝致します。SNSの時代らしく各国選手が選手村の様子をネット上で公開して話題となり、パラリンピックになって大きな目をしたマスコットキャラクターのミライトワとソメイティの人気が出てきたようです。
 
 さて、以下でタンザニア選手の結果をまとめてお伝えし、長らく連載してきた本シリーズの締めくくりとさせて頂きます。
 まずオリンピックですが、日本選手が27個の金を含むメダル58個を獲得と大活躍しましたが、タンザニアからはマラソンに的を絞り、男女3名の選手が札幌での競技に出場しました。7月23日の開会式にはタンザニア五輪委員会の幹部が入場行進で国旗の旗手を務めるはずですが、大会ボランティアが代行し、直前までアルーシャで合宿した選手は月末に訪日しました。8月7日の女子マラソンは暑さを避けて当初予定よりさらに一時間早い午前6時のスタートとなりましたが、小柄なマタンガ選手はレース中盤まで先頭集団に加わる健闘をみせました。終盤にケニアの2選手が抜け出し金銀を占め、マタンガ選手は24位でゴールしました。
 翌日大会最終日の男子マラソンでは、同じくケニアのキプチョゲ選手が前評判通りの圧倒的な力と安定感を見せつける形でリオ大会からの連覇を達成。タンザニアの若手として期待されたギイ選手は残念ながら序盤から失速してしまいましたが、リオ大会にも出場したベテランのシンブ選手は35キロ過ぎまで先頭集団に食らいつく粘りを見せました。ゴールに向かう最終段階で日本の大迫選手に抜かれて7位となりましたが、多くの選手が暑さで脱落する中での大健闘でした。
 次に8月24日に開幕したパラリンピックですが、タンザニアから男女1名ずつ2選手が出場。男子円盤投げ(車いす)のムトゥウェヴェ(Ignas M. Mtweve)選手は、22.88メートルで8位。女子砲丸投げ(車いす)のンジョペカ(Sauda S. Njopeka)選手は、4.18メートルで19位でした。いずれの記録も金メダルを獲得した優勝者の半分くらいですが、それぞれ今シーズンベストと自己ベストですので、どちらの選手も本番で全力を出し切ったものと考えられ、胸を張れる成績と言えましょう。
 
 本シリーズでは、東京2020大会に向けたいくつかの種目の準備状況をご紹介する形で、タンザニアのスポーツ事情をお伝えしてきました。国際的な大企業がスポンサーとして選手を支え、また国家レベルでも応援する態勢が整っている隣国ケニアの大活躍に比して、メダルゼロに終わったタンザニアとの違いは際立つものがありました。活動資金や選手の育成に必要な人材の決定的な不足、そして教育における勉学最優先でスポーツ活動への配慮が十分とは言えない国の方針などにより、タンザニアの若者が折角豊かな素質を持ちながら、これを国際大会の場で競うレベルまで十分に開花させることができていないのは実に残念です。しかしこれまでご紹介してきました通り、それぞれの種目で将来を視野に入れた地道な努力が日本人を含む多くの方々によって行われています。次回パリ大会2024以後、こうした努力が大きな成果を生むことを願って止みません。
 
 因みに、前回ご紹介した通り、オリンピックのホストタウンであった山形県長井市におけるタンザニア選手の事前合宿は中止されたため、同市の皆さんは大きな寄せ書きを作成してマラソンを応援しました。そして同市の鈴木政輝さんによれば、大会関係者として来日したスポーツ振興局ユサフ・シンゴ・オマリ局長と内谷市長のオンライン会議が開催され、その場でタンザニア側から首都ドドマ市との姉妹都市締結に向けたレターが発出されるであろうとの報告があったとのことです。JETプログラムのスポーツ国際交流員として同市において大活躍されたバハリさんの後任として、マグズ(Charles Maguzu)さんが引き続きタンザニアから派遣されることとなりました。今般の大会をきっかけとして、同市のタンザニアとの交流がさらに新たな次元に発展することを心から祈念しております。

                            在タンザニア日本国大使館
                            特命全権大使
                            後藤真一