後藤大使のタンザニア・スポーツ界探訪シリーズ(6) 大会直前の近況報告

2021/7/6
 皆さん、大変ご無沙汰して申し訳ありませんでした。昨年2月末に在タンザニア日本人会商工部会などからの寄付をタンザニア五輪委員会にお届けしたことをお伝えしましたが、引き続きタンザニアにおける柔道、ボクシングなどを御紹介する予定でした。今回は、タンザニアにおける柔道の状況、及びいよいよ今月23日に迫った大会本番を控えた最新情報をお届けします。

1.タンザニアにおける柔道
 まず柔道ですが、実は柔道協会については昨年4月に訪問取材の日程が一旦固まったものの、ご想像の通り新型コロナの第一波が到来し、対面活動の自粛が求められた先方の意向もあり、取材を断念しました。よって以前大使館を尋ねて来てくれたダルエスサラームの協会幹部の皆さんの話をご紹介しますと、同協会では市内の道場で刑務所刑務官メンバーを中心に指導に当たり、貧しいストリートチルドレンらの青年非行防止や更生支援をも念頭に活動しており、日本から贈呈された古着の柔道衣で多くの青年が練習に励んでいるとのことです。特段の高価な道具が要らないスポーツとして柔道は若者の間で人気は上々のようですが、悩みは畳の調達・運搬と試合の運営に必要な選手の旅費等の確保ということです。そして柔道においても選手の育成面では、将来性のある素質溢れた若手を小中学生の段階でいかに見出し、それを育てる有能なコーチをいかに得ることができるかが課題であるとしていました。

 次に柔道と言えば、インド洋の島ザンジバルにおいて本シリーズの第二回で御紹介した島岡強・由美子ご夫妻が、コーヒー・紅茶・カシューナッツや伝統衣装キテンゲ等服飾雑貨といったタンザニア特産品の貿易業務や、野生動物をテーマとするコミカルで鮮やかな絵画ティンガティンガ・アートの日本での販売紹介活動の傍ら、島岡強氏をザンジバル柔道連盟名誉会長として長年にわたって地元青年の育成に尽力してきました。ザンジバル共和国を構成するウングジャ・ペンバ両島それぞれに有志による寄付や政府補助金に加えて私財をも投じて道場「武道館」を建設し、有力選手の日本へのスポーツ留学支援も行うなど、実に精力的に普及活動を展開されています。因みにストーンタウンのザンジバル全国陸上競技場に隣接する武道館には、2014年のタンザニア訪問の際に秋篠宮ご夫妻が立ち寄られ、記念試合を御覧頂いています。古着の柔道衣については、昨年もザンジバル柔道連盟の依頼に応えて公益財団法人柔道連盟とNPO法人JUDOsから200着が寄贈され、タンザニア内の各道場で練習に励む若者達に届けられています。

 さらに柔道に関しては、毎年、東アフリカ地域レベルでの柔道選手権大会が開催されており、タンザニア本土、ザンジバルの他、ケニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジからの6チームの選手が持ち回りでお互いに集いながら競い合い切磋琢磨する場となっています。私もダルエスサラーム近郊キバハで開催された2019年の大会にお招き頂いて祝辞と優勝者への賞品贈呈をしましたが、今年3月にザンジバルで新型コロナ禍において苦労して開催された第13回大会の模様は、ネット情報アフリカフェ@バラカBlogの「タンザニア便り」掲載の関連記事をご参照ください。
 残念ながら、代表選手選考の過程を経て東京オリンピックにタンザニアの選手が参加することは叶いませんでしたが、いずれ実力をつけて国際舞台で活躍する日が訪れることでしょう。ご自身も4段の腕前を誇る島岡強名誉会長によれば、順天堂大学に留学したアブドルラッビル選手など有望な若手が着実に成長しているそうです。

訂正:本シリーズ第三回において,過去のタンザニアのオリンピックメダリストを,1980年のモスクワ大会において3000メートル障害で銀メダルを獲得したフィルベルト・バイ(Filbert Bayi)選手(現タンザニア五輪委員会事務局長)が唯一と記載しましたが,同じモスクワ大会においてスレイマン・ニャンブイ(Suleiman Nyambui)選手が同じく陸上競技の5000メートルで銀メダルを受賞しています。謹んでお詫びの上,訂正します。因みにバイ氏は、タンザニアにおけるスポーツ振興を目指して自らの名を冠した陸上トラックとスポーツ体育館をダルエスサラーム近郊のキバハに建設し、体育館は東アフリカ柔道選手権大会の会場としても利用されています。 
ウガンダチームと 東アフリカ柔道選手権大会 2019年3月19日
試合模様(個人決勝) 東アフリカ柔道選手権大会 2019年3月19日
フィルベイト・バイ・スポーツ総合競技場:東アフリカ柔道選手権2019大会会場 2019年3月19日
バイ氏、島岡名誉会長と 東アフリカ柔道選手権大会 2019年3月19日
2.東京オリンピック代表選手と受け入れ準備状況
 さて、その後世界大の新型コロナ感染拡大により東京オリンピック自体が一年延期となったため、準備や選手選考がいったん仕切り直しとなりました。タンザニアでは昨年10月末の選挙で再選を果たしたマグフリ大統領が新型コロナ第二波の最中今年3月に急死し、初の女性大統領を仰ぐサミア・ハッサン政権が発足。これに伴いスポーツ担当大臣もムワキエンベ氏から前産業貿易大臣の若手,バシュングワ氏に交代しました。タンザニア五輪委員会においても主要役職員の任期切れに伴う改選がありましたが、オリンピックを間近に控えて続投となりました。
 
 他方日本側では、ホストタウンとなっていた山形県長井市も計画延長を余儀なくされていましたが、オリンピック・パラリンピック交流推進室を立ち上げて本年5月にはタンザニア代表選手が正式に決まり次第、詳細な受入計画を策定する手はずとなっていました。このため、私も帰国に合わせて5月20日に同市を訪問。内谷重治市長他、竹田利弘政策推進監、新野弘明総務参事等の幹部と面会して準備状況を伺うとともに、激励を込めて市役所の職員の皆さん向けの講演や地元FM「おらんだラジオ」出演(山口良子パーソナリティーとのインタビュー)などをさせて頂きました。2年振りの訪問でしたが、長井市の皆さんに温かく迎えて頂き、また内谷市長には新たに竣工・開庁したばかりの鉄道の駅舎と一体化したユニークな市庁舎をご案内頂き、深く感謝します。
 
しかし、その後6月6日の同市における聖火リレーも終え、さあいよいよ本番と盛り上がったタイミングで、タンザニア五輪委員会は、代表を3名の陸上競技選手のみとすることを発表。いずれもマラソン選手で、男子2名のシンブ選手(Alphonce Simbu)とギイ-選手(Gabriel Geay)、女子1名のマタンガ選手(Failuna Matanga)となりました。同時にこれを受けて担当ヘッドコーチの判断により、気象等のトレーニング環境に照らして相応しくないとしてホストタウン長井市での事前合宿を急遽見合わすことなってしまいました。2019年8月に島岡ご夫妻の調整支援を受けて内谷市長ご自身が同市関係者とともにタンザニアをご訪問して漕ぎ着けた覚書署名以来、パンデミックの中で様々な実務面でのご苦労をされてきた長井市役所の鈴木政輝さん(母親のルルさんは青年海外協力隊員とご結婚されて来日したタンザニア女性)、JETプログラムの国際交流員として派遣されているタンザニアのバハティ・ロジャースさんと米国のディーン・セーラさん、そしてこの4月から長井市役所職員に採用された元タンザニア派遣青年海外協力隊員の所里帆さん等ご担当の皆さんをはじめ、地元関係者の方々は、タンザニア五輪委員会からの連絡を受けて、さぞかし落胆されていることと思います。側面支援させて頂いてきた大使館としても大変残念に思っております。しかし長井市は、7月1日付で市長メッセージをHPに掲載して事情を説明するとともに、タンザニア応援の継続と寄せ書きの送付に向けた準備を進めていることを伝えています。そして、往年のライバル、名マラソン選手であったジュマ・イカンガーさんと瀬古利彦さんをお招きしてトークショーを実現するなど、毎年10月に開催されてきた恒例の長井市マラソン大会を中心に関係強化に努めてきた実績を背景に、同メッセージにおいてオリンピック後を見据えたタンザニアとの交流の発展を引き続き目指す強い決意が表明されています。大使館としてもポスト・オリンピックの支援継続を行っていきたいと考えています。
 
 最後に新聞報道などによれば、来る23日の開会式にはタンザニア五輪委員会のタンダウ副会長が参加する予定です。3名の代表選手については、国内北部の高地アルーシャ州での必要な調整を直前まで行い、女子が8月7日、そして男子がオリンピック最終日の翌8日にそれぞれ予定されている札幌でのレース本番一週間前に来日することになる模様です。新型コロナ禍における開催であるため常と異なることが多い大会ですが、遠路遥々赤道以南の東アフリカから多くの課題を乗り超えて参加するタンザニア3選手のご健闘を心から祈念します。
 タンザニア、オーイェ!
 
                                                  以上
長井市役所職員の皆さんへの講演 2021年5月20日
長井市地元FM「おらんだラジオ」山口良子パーソナリティーとのインタビュー 2021年5月20日
4月に竣工し、開庁したばかりの新庁舎  2021年5月20日
長井市の市章アヤメの前で(新庁舎会議室にて) 左から竹田政策推進監、所里帆さん、本使、内谷市長、新野総務参事、鈴木さん