後藤大使のタンザニア・スポーツ界探訪シリーズ(3) タンザニア陸上競技連盟
令和元年12月16日
今回はタンザニアの最有力種目である陸上競技,特に長距離に関してご紹介しましょう。ご案内の通り,タンザニア唯一のオリンピックメダリストは,前回ご紹介したタンザニア五輪委員会で事務局長を務めるフィルバート・バイ氏で,ソ連によるアフガニスタン侵攻により西側諸国がボイコットした1980年のモスクワ大会において3000メートル障害で見事銀メダルを獲得しています。それまでに同選手は,本来得意とする1500メートルで勇名をはせており,73年のアフリカ大陸競技大会,74年の英連邦コモンウェルス競技大会,そして78年のアフリカ大陸競技大会で優勝するという輝かしい実績を残しています。
また,日本ではマラソン選手として80年代にかつて瀬古利彦選手の強力なライバルであったジュマ・イカンガー選手が特に有名ですが,彼は今では日本との重要な架け橋役となって,JICAの特別アドバイザーを務めています。その成果のひとつとしてご紹介すべきは,JICAタンザニア事務所スタッフの伊藤美和さんとともに提唱し、毎年開催される全国女子陸上競技大会「レディース・ファースト」で,今年も国内ほぼ全ての州及び特別に招待された南スーダンからの参加を得て,第三回大会が12月7日,8日の2日間にわたり執り行われました。因みにこのレディース・ファーストは,9月の安倍総理によるニューヨーク国連総会でのスピーチにおいて、アフリカにおける女性の社会的地位向上を図るためにタンザニアで日本が支援する試みとして広く世界に向けて紹介されて大きな反響を呼び(注)、ムワキエンべ・スポーツ担当大臣などタンザニア政府幹部からとても感謝されました。イカンガー氏は今回ご訪問したタンザニア陸上競技連盟の執行役員のメンバーでもあります。
(注)外務省HP「第74回国連総会における安倍総理大臣一般討論演説」ご参照
タンザニア陸上競技連盟(Athletics Tanzania :AT)の事務局オフィスは、ジュリウス・ニエレレ国立競技場正面の道を挟んだ向かい側の屋台などがある区画に立つ簡素な平屋ビルの一室で、入口の看板もコピー用紙のようなものに手書きで名称が表示されているのみです。私の到着に合わせて急遽駆け付けたイカンガー氏が温かく迎え入れてくれました。
ザヴァラ事務局長代理によれば、同連盟の設立は1954年7月に遡り、英国植民統治時代に国際陸上競技連盟(IAAF、略称は世界陸連。最近組織名称をワールドアスレティックス(World Athletics)に変更)の下、アマチュアリズムを本旨とするものとして発足。東アフリカ地域全体の団体である東アフリカ地域連盟(参加国は、エジプト、ソマリア、エチオピア、ジブチ、スーダン、南スーダンなどを含む13か国で、タンザニアからは本土側タンザニアとは別途ザンジバルが個別に加盟)に所属し、傘下には、本土側から26、ザンジバルから5つの地方連盟を納めるものとなっています。事務局は現役のシミユ州長官であるムタカ事務局長の下にカラゲ氏とンデー氏の2名の副事務局長を擁し、それぞれ財務・総務と技術指導を分担しています。執行委員会はイカンガー氏を含む19人で構成され、いずれも無給ボランティアの身で活動に関わっているとのことでした。
ここでも最大の課題は予算不足で,中央政府や五輪委員会からの補助はなく、世界陸連から年間15,000米ドルの助成があるのみで、マラソン大会などへの選手の参加会費と事務局の家賃・光熱費などに充てるのが精一杯。このため世界陸連による主要イベントに参加する航空チケット代の支払いにも窮する状況です。
学校教育の場では、現在、小学校と中高で全国競技大会がありますが、大学レベルでの大会はなく、選手育成上の大きな障害となっています。大学は勉学中心で,一般にスポーツ競技への関心は極めて低いため、当面は改善が見込めないようです。
面談途中でタンザニア国家スポーツ評議会のマホナ氏が参加してくれましたが、彼によれば陸上競技としての主要大会は、国際大会としてのオリンピックと英連邦競技大会、最近モロッコで開催された全アフリカ大会、世界陸連競技大会、ワールドクロスカントリー大会などがありますが、これらの大会に際してナショナルチームのトレーニング・キャンプが組まれます。現在チームは20名選手と4名のコーチから構成され、来年の東京オリンピックに向けて1月から6月までの予定で対応することになります。有力選手はいわゆるリフトバレー地方やアルーシャ,そして最近はシンギダ出身が多いそうです。
外国からの支援は、かつて北京オリンピックの際に中国が潤沢な資金支援とコーチ派遣をしてくれたようですが、その後は継続していません。ケニヤやエチオピアなどでは、米国のナイキ社、ドイツのアディダス社、そして日本のアシックス社などが有力選手と契約して資金支援を行っているので、裸足の選手もいるタンザニアとは大きなギャップがあります。
最後にずばり東京オリンピックでメダリストになる可能性がある有力選手は誰かと尋ねてみると、男女ともマラソン選手で,いずれも既にオリンピック参加に必要な参考記録をクリアしており、男子はシンギダ州出身のアルフォンス・シンブ(Simbu)選手、女子はコンドア出身のフェイルナ・マタンガ(Matanga)選手とのことでした。イカンガー氏もホストタウンである長井市などのご協力を得て,来年ナショナルチームとともに来日し,オリンピック本番を控えたトレーニング指導に当たる予定です。皆さん、是非注目して応援をしましょう!次回はタンザニア甲子園大会を主導するタンザニア野球連盟(TABSA)をご紹介しましょう。
追記 このたびタンザニア五輪委員会から,大使館と日本人会商工部会宛てに事務局長バイ氏署名による資金支援要請のレターが着信しました。可能な対応を検討させて頂きたいと思いますので、ご協力のほどを宜しくお願い致します。
また,日本ではマラソン選手として80年代にかつて瀬古利彦選手の強力なライバルであったジュマ・イカンガー選手が特に有名ですが,彼は今では日本との重要な架け橋役となって,JICAの特別アドバイザーを務めています。その成果のひとつとしてご紹介すべきは,JICAタンザニア事務所スタッフの伊藤美和さんとともに提唱し、毎年開催される全国女子陸上競技大会「レディース・ファースト」で,今年も国内ほぼ全ての州及び特別に招待された南スーダンからの参加を得て,第三回大会が12月7日,8日の2日間にわたり執り行われました。因みにこのレディース・ファーストは,9月の安倍総理によるニューヨーク国連総会でのスピーチにおいて、アフリカにおける女性の社会的地位向上を図るためにタンザニアで日本が支援する試みとして広く世界に向けて紹介されて大きな反響を呼び(注)、ムワキエンべ・スポーツ担当大臣などタンザニア政府幹部からとても感謝されました。イカンガー氏は今回ご訪問したタンザニア陸上競技連盟の執行役員のメンバーでもあります。
(注)外務省HP「第74回国連総会における安倍総理大臣一般討論演説」ご参照
タンザニア陸上競技連盟(Athletics Tanzania :AT)の事務局オフィスは、ジュリウス・ニエレレ国立競技場正面の道を挟んだ向かい側の屋台などがある区画に立つ簡素な平屋ビルの一室で、入口の看板もコピー用紙のようなものに手書きで名称が表示されているのみです。私の到着に合わせて急遽駆け付けたイカンガー氏が温かく迎え入れてくれました。

ザヴァラ事務局長代理によれば、同連盟の設立は1954年7月に遡り、英国植民統治時代に国際陸上競技連盟(IAAF、略称は世界陸連。最近組織名称をワールドアスレティックス(World Athletics)に変更)の下、アマチュアリズムを本旨とするものとして発足。東アフリカ地域全体の団体である東アフリカ地域連盟(参加国は、エジプト、ソマリア、エチオピア、ジブチ、スーダン、南スーダンなどを含む13か国で、タンザニアからは本土側タンザニアとは別途ザンジバルが個別に加盟)に所属し、傘下には、本土側から26、ザンジバルから5つの地方連盟を納めるものとなっています。事務局は現役のシミユ州長官であるムタカ事務局長の下にカラゲ氏とンデー氏の2名の副事務局長を擁し、それぞれ財務・総務と技術指導を分担しています。執行委員会はイカンガー氏を含む19人で構成され、いずれも無給ボランティアの身で活動に関わっているとのことでした。
ここでも最大の課題は予算不足で,中央政府や五輪委員会からの補助はなく、世界陸連から年間15,000米ドルの助成があるのみで、マラソン大会などへの選手の参加会費と事務局の家賃・光熱費などに充てるのが精一杯。このため世界陸連による主要イベントに参加する航空チケット代の支払いにも窮する状況です。
学校教育の場では、現在、小学校と中高で全国競技大会がありますが、大学レベルでの大会はなく、選手育成上の大きな障害となっています。大学は勉学中心で,一般にスポーツ競技への関心は極めて低いため、当面は改善が見込めないようです。

面談途中でタンザニア国家スポーツ評議会のマホナ氏が参加してくれましたが、彼によれば陸上競技としての主要大会は、国際大会としてのオリンピックと英連邦競技大会、最近モロッコで開催された全アフリカ大会、世界陸連競技大会、ワールドクロスカントリー大会などがありますが、これらの大会に際してナショナルチームのトレーニング・キャンプが組まれます。現在チームは20名選手と4名のコーチから構成され、来年の東京オリンピックに向けて1月から6月までの予定で対応することになります。有力選手はいわゆるリフトバレー地方やアルーシャ,そして最近はシンギダ出身が多いそうです。
外国からの支援は、かつて北京オリンピックの際に中国が潤沢な資金支援とコーチ派遣をしてくれたようですが、その後は継続していません。ケニヤやエチオピアなどでは、米国のナイキ社、ドイツのアディダス社、そして日本のアシックス社などが有力選手と契約して資金支援を行っているので、裸足の選手もいるタンザニアとは大きなギャップがあります。
最後にずばり東京オリンピックでメダリストになる可能性がある有力選手は誰かと尋ねてみると、男女ともマラソン選手で,いずれも既にオリンピック参加に必要な参考記録をクリアしており、男子はシンギダ州出身のアルフォンス・シンブ(Simbu)選手、女子はコンドア出身のフェイルナ・マタンガ(Matanga)選手とのことでした。イカンガー氏もホストタウンである長井市などのご協力を得て,来年ナショナルチームとともに来日し,オリンピック本番を控えたトレーニング指導に当たる予定です。皆さん、是非注目して応援をしましょう!次回はタンザニア甲子園大会を主導するタンザニア野球連盟(TABSA)をご紹介しましょう。
追記 このたびタンザニア五輪委員会から,大使館と日本人会商工部会宛てに事務局長バイ氏署名による資金支援要請のレターが着信しました。可能な対応を検討させて頂きたいと思いますので、ご協力のほどを宜しくお願い致します。